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日曜日, 6月 24, 2007

殺しのライセンス

「哲っちゃん離れて」
車のエンジン音と共に叫び声が聞こえたので、私は後ろに尻餅をつく。
 菊地も音に反応したが、振り向いた方角が車と真逆であった。
次の瞬間、加速して突っ込んできた車が菊地を跳ね飛ばす。
交通事故である。
それも、壮絶な!
ぼんっ。きききーっ。バコン。ドン。スタスタスタ。
「ふぅ、危ないところだったわね、大丈夫?」
車らから降りた先輩が私に手を差し出しながら言った。
大丈夫ですかーする相手が違うと思います!

 私は車の前でドクドク血を流して伏せている菊地だったモノを目の当たりにし口聞けずにいた。
腰抜けたー。
 先輩はニカッと笑って、
「だいじょ~ぶ」
ジャーンと、何か免許証のようなモノを私に提示する。
運転免許証?いや違う。
そこには、殺人許可証明証と書いてあった。
 
 「それって?」それがあれば人を跳ねても、救助活動しなくておk?
救急車呼ぶ?等と私が考えてると。
「これは殺人許可証明証、いわゆる殺しのライセンスってやつだね」
相変わらずエッヘン。
「どうしたんすか、それ」
「道で拾った」可愛く言っても駄目ですよ。
「全然駄目じゃないですか~」私は少し泣きたい気分だ。
「全然駄目じゃないぞ、これを持っていれば、車で人を轢いてもおっけ」
「わけわかんないよ~」
「いや、許可されてるし、私が私自身を許可」
「そんなの駄目じゃない」
口あんぐりだよ、もはや。

「ほら、見てご覧」車の前方を見やると。
菊地は血を流して痙攣して居るどころか、綺麗にさらさらと透明になって、その場から消え去ろうとしているではないか。
「あらら?」
「正義は勝つって事かな」あっはっはと高笑いする先輩。
車のフロント部分はバンパーもボッコボコだし、フロントガラス凄いヒビ!のままなんですけどね。
「あぁ、大丈夫。あの車も道で拾った」
「レンタカーですらない!!」

「ところで、後始末はどうするんですか?」
「あっ大丈夫。奴ら死体残らないのよ。さらさらと豆になって、朝になると鳩たちがキレイにしてくれるわ」
 くるっくー。
朝になると、道端に豆がまき散らされていたのはこういう訳だったのか。

 我々はそそくさと現場を離脱した
「助けて貰っといて、こんな事言うのも何なんですがー」
「なら言うな」
私は一つ溜息をついた後、
「殺しのライセンスなんて勝手に発行して良いんですか?それに何の意味が。やっぱり、人を殺すのは良くないと思います。」
 すると、先輩は立ち止まってこう、力説したんだ。
「もしかして、君は私が日本刀とか魔法とか、変身して魔法で殺せば?良かったって思って居るんだ?」
「変身しても何も変わりません」
「そう」少しガッカリ。
 「いいか、哲子。自分で自分を許可しないで誰が許可する!国か?上司か?親か?先生か?
頭付いてるんだろ、自分の頭で考えて自分で許可しなさい。もしそれが出来ないのなら」
ごくり。
「そんなんじゃいつまで経っても東陽町を解放できない」
先輩は、少し寂しそうに言うと、無言でアジトに向かい先を歩き出した。

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